りんごの芯

思いついた事感じた事を言葉に ショートストーリーにしています。

息子

私はバックスペースキーがすきだ
私が書いたものを一文字一文字消していく
まっさらに戻った画面を眺めながらもキーから指を離せずにいる

ぼうっとまっさらな画面を眺めていたらコトッと木の机になにか置かれる音がした
キーから指を画面から視線をはなし音のした方をむく
そこにはホカホカ湯気のたったココアと共に
今日は8月12日だよ お疲れ様ひと休みしてねというメモだけが残っていた

わたしが作家という肩書きを持って早半年経っていた
全く作品ができない
俗にいうスランプに早々に陥っていた
書いては消し書いては消し
気づけば息子の誕生日になっていた

ケーキを三つ買おうと思い立ち上がったが
鬱陶しい蝉の声がだるい体の中に響き渡り気怠くなる

伸びきったTシャツを脱ぎ捨て半袖のブラウスを着る
短すぎるショートパンツを踏んで脱ぎ去り柔らかな紺色のスカートを履く
顔をサクッと洗い粧水 乳液 クリームとテキパキと保湿する
化粧はゆっくりのせていく
長い髪の毛をきゅっと結び完成

服のシワを確認し帽子を選びクラッチバッグに財布とケータイを入れ準備オッケイ
重い扉を開け久しぶりに浴びる太陽は突き刺さりクラっとしながら
ケーキ屋まで徒歩5分 の道のりを歩き出した
これは何回目の息子の誕生日なんだっけなと
指をおり数える

彼はチョコレートケーキ私はショートケーキだな
息子はなんだろうチョコレートケーキにしようかな

なんて考えていたらケーキ屋さんに到着
普通のチョコレートケーキとショートケーキそしてザハットルテ最高の組み合わせだ

ケーキを持って歩く時にはすごく緊張する
コケてしまわないか横になってしまわないか
片道5分が頭を抱えるほど長いと思った